チラシのデザインを制作する際は要注意|著作権は誰のもの?
チラシを制作する際、デザイン会社へ依頼することも少なくありません。デザインだけでなくイラストや画像の作成も同時に依頼することも多いでしょう。
チラシの制作を依頼する際は、「著作権」に注意して依頼しなければなりません。
そこで今回は、チラシのデザインを依頼した場合の著作権の所在と制作時の注意点について解説します。また、外注先が制作したデザインを自社のサイトやポスターなどで使用する方法も併せて紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
1.著作権とは?
情報技術が発展し、「著作権(財産権)」という言葉を日常生活のなかで耳にする機会が多くなったと感じる方もいるでしょう。しかし、絵画や小説などにあるとわかっていても、詳しくは分からないという方も多いのではないでしょうか。
著作権とは、著作物を使用することで生まれる利益を守る権利の総称です。登録などは必要なく、創作物ができた時点で発生する権利です。
著作権の代表的なものには、作品を複製する権利である「複製権」が挙げられます。複製権は、簡単にいうと「他者(他社)が作った作品を使用許諾なく勝手に使ってはいけない」というものです。
著作権は、他者に譲り渡すことができます。ただし、著作権を持っている方と著作者が異なることもあるため、注意が必要です。
著作物に発生する権利には、著作権の他にも「著作者人格権」があります。著作者人格権とは、著作物を作った方の人格を保護する目的で定められた権利です。
著作者人格権には、以下の3つがあります。
- ●公表権…著作物を公表するかどうか決定する権利
- ●氏名表示権…著作物の名前を表示するかどうかを決定する権利
- ●同一性保持権…著作物の内容を無許可で改変されないための権利
著作者人格権は、これらの権利を通して、作品を作った方が不利益を被らないようにするものです。また、著作者人格権は、著作者の気持ちや考えを保護するための権利でもあります。
そのため、著作権のように他者に譲渡することはできません。著作権が著作者の死後70年まで保護されることに対し、著作者人格権は著作者が亡くなると同時に権利が消滅します。
日本における著作権に関するルールは、著作権法で定められています。著作権に関するルールに違反して著作者の許可なく勝手に著作物を使った場合、裁判を起こされたり損害賠償請求されたりする恐れがあるため、注意しましょう。
【著作権を侵害したと認められた場合の罰則】
著作権の侵害 |
10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 |
著作者人格権の侵害 |
5年以下の懲役または500万円以下の罰金 |
また、法人が著作権を侵害した場合は、3億円以下の罰金と定められています。著作権違反には厳しい罰則が待っているため、デザインやイラスト、画像などといった美術作品をはじめとする創作物の取り扱いには十分注意しましょう。
2.チラシ制作時に注意すべき著作権とは
著作権は、「作品そのものや著作者を保護するために尊重されるべき権利」と法律で定められています。そのため、たとえ悪意がなくても著作権を侵害した場合には厳しい罰則を逃れることは不可能です。とくにチラシのデザインを依頼する場合は、写真や画像、キャラクターなどのイラストといったものを扱うことが多いため、著作権上注意すべきポイントも少なくありません。
では、チラシ制作時にはどのような注意を払うと良いのでしょうか。ここでは、チラシ制作時に注意すべき著作権について具体的に解説します。
2-1.キャッチコピー
チラシを制作する際、チラシを見る方の心を掴むために、キャッチコピーやキャッチフレーズを使用することも多いでしょう。印象的で有名なキャッチコピーをオマージュしようと思う方もいるのではないでしょうか。
キャッチコピーは比較的短い言葉であり、日常的に使用される言葉や文字を含むことが多く、フレーズ自体はクリエイティブであるとはいえません。そのため、キャッチコピーのような短い文章は、著作物とみなされないケースも多くあります。しかし、イラストなどの作品と同様に、キャッチコピーにも作者がいます。
比較的短い作品である俳句や短歌も、創作性が高いことから著作物とみなされます。そのため、俳句や短歌をそのまま、もしくは改変して使用したい場合は、著作権に引っ掛からないかどうかを必ず確認しましょう。
2-2.写真・画像
チラシを制作する際、商品の写真や画像を使用することも多いでしょう。写真や画像は、思想や感情などを創作的に表現したもので、文芸・学術・美術または音楽の範囲に属するものであるため、著作上の対象となるかどうか判断することは難しいです。
しかし、写真や画像にも、撮影した方や作成した方などに著作権が帰属します。そのため、写真や画像の多くは著作物として認められる可能性が高いと考えておくと良いでしょう。
写真を自分で撮影すれば、その写真の著作者は自分になるため、著作権上は安心して使用できます。しかし、写真には肖像権など著作権以外の問題も出てくるため、チラシに写真を使用する場合は、被写体となる方の同意を得た上で自ら撮影したものを用いるよう心掛けましょう。
2-3.イラスト・ロゴデザイン
イラストやロゴマークなどのデザインされた制作物には多くの場合著作権が生じます。著作権は基本的には制作者に所属するため、著作権が認められたイラストやデザインを使用したい場合は、制作者に申し出て利用許諾を得た上で使用料を支払う必要があります。
チラシにイラストなどを掲載したい場合は、自作したものや制作会社などに依頼したものを利用しましょう。いずれの方法でも、既存のイラストとの類似性が高い場合や既存のイラストを模倣した場合は、著作権を侵害していると捉えられることもあるため注意が必要です。
またイラストなどのデザインを依頼する際に発注者が「このようなイメージで作ってほしい」といったアイデアを出すこともあるでしょう。アイデアを出すことも創作活動の1つの段階ですが、アイデア自体に著作権は発生しません。イラスト作成時にアイデアを出していたとしても、アイデアを発案しただけでは著作権で保護されないため、クライアント側はイラストの著作権は主張できないことを覚えておきましょう。
3.外注先に依頼して作られたデザインの著作権
チラシのデザインを自社で行えない場合、デザイン会社や印刷会社などに外注することとなります。この場合、チラシで使用したデザインの著作権は誰にあるのでしょうか。
結論からいうと、デザインの著作権の帰属先は、デザインを制作した作成者側(制作会社側)であり、クライアント側には作成データに関する著作権はありません。そのため、提出されたチラシのデザインを発注側が自分のホームページへ掲載したり、ポスターに転用したりすることは著作権の侵害にあたる場合があります。
「自分が依頼して作ってもらったデザインであるから」といった理由で、外注先に許諾なく印刷データを流用することは控えましょう。
3-1.外注先が制作したデザインを依頼者が使用する方法
前述したように、チラシに使うイラストやデザインなどを外注先に依頼した場合、出来上がった作品は著作物とみなされるため、外注先が著作権を保有します。しかし、外注先が制作したイラストやデザインをチラシ以外の用途で使用したいこともあるでしょう。
著作者人格権は他者に譲渡できませんが、複製権を含む著作権は、他者に譲渡することが可能です。そのため、外注先と相談してデータの著作権の譲渡契約や買い取り契約を結べば、自分のウェブサイトなどに外注先が制作したデザインなどの成果物を自由に使用することができます。
また、前もってチラシ以外にデザインを使用することを考えている場合、デザインを依頼する際の契約書に「著作権は依頼主に譲渡する」という内容を記載しておきましょう。著作権の所在について明確になる他、デザインを使用しても良いかその都度チェックする必要がなくなるため、手続きも煩雑にならずに済みます。
チラシのデザインを自分のウェブサイトやポスターに展開することを考えている方は、デザインなどの著作権を譲渡してもらえるよう、事前に外注先と相談しておきましょう。
まとめ
写真やデザインなどは、著作権が認められるケースがほとんどです。そのため、会社のチラシを制作する際は、一から自作またはデザイン会社などに外注するなどして、オリジナルのものを作るようにしましょう。
外注したデザインの著作権は外注先にあるため、チラシ以外のメディアに展開したい場合は、事前に著作権を譲渡してもらう契約を結んでおくことが重要です。
著作権の侵害行為とみなされた場合、悪気がなかったとしても厳しい罰則が科せられます。そのため、チラシなどのデザインを制作・転用する際は、トラブルを回避するためにも、必ず著作権のルールを守りましょう。
チラシの作成手順を紹介!失敗しないためのコツから依頼先の特徴まで